あの国の、あの手術はピンチだった・・・そんな瞬間はありましたか？　

やっぱりカンボジアですかね。
カンボジアでは、これまで１７００件以上の手術をしてますから。
『この出血は、本当に止まるのか？！』って思うようなことを、何度か経験してますね。
日本と違って、事前の情報が全くない状況でも手術をしなければならないこともあって、
極端な時は、触った感じ、見た感じ、それだけで手術しなければならないこともあるので、
首の手術とかになってくると、厳しい状況に追い込まれたケースは何度かあったかな～
結果的に、きっちり仕留めましたけど。
日本では、こんな経験は１回もないですからね。

何度か見せて頂きましたが、手術中は、いつも淡々としてますよね？

そうですね。冷静です。どんなことが起こっても常に冷静。そこは変わらないですね。
周りは焦っている時でも、淡々としてますね。
やっぱり、ドクターがバタバタしたら、現場の雰囲気が変わりますからね。

日本の医療って、世界ではどのレベルにあるんですか？　

今の情報社会の中では、どの国も医療レベルは変わらないですよ。
昔はドイツ、そしてアメリカと言われてましたけど、今の医療水準は、どこも変わらないです。
ただ、外科医だけで言うと、手術の上手さは、日本人がダントツで上手いです。
もちろん、日本にもいろんな先生がいますけど、
日本人の本当に上手い外科医の技術力は、世界でもトップですよ。それは間違いない。
やはり日本人は器用です。だから、これからもっともっと、日本人医師で凄い方が出てくると思いますよ。

やはり、フリーランスの方が良いですか？

一長一短ですね・・・確かに、フリーになったことで、海外の医療活動の自由度は増しましたが、その分、プレッシャーは大きいですよ。
僕が倒れたら、収入がゼロ。家族の生活もままならないですから。
そして、僕を待ってくれている海外の患者さんたちのもとにも行けなくなりますからね。

今、６（日本）：４（海外）なんですけど、６０％の日本では、関西のどこかの病院で医療をしているわけですから、この時間の全てを１つの病院にお渡しして、雇われでも全然OKなんです。ただ日本の病院では、なかなか難しいですよね。だから、海外の医療活動を続けるには、フリーランスの道しか無かったんです。

病院勤めと、フリーランスって、何が大きく違いますか？

３６５日、いつも緊張感を持つようになったかもしれません。
見た目は淡々と手術したりしてますけど、フリーになったことで、かなりの覚悟と緊張感を持ったことは確かです。人気ドラマと同じで、“私、失敗しませんから”とまでは言いませんけど、何かミスをしてしまったり、評判が悪くなるようなことがあれば、すぐにオファーが来なくなりますから、日本でも、カンボジアでも、ず～と緊張感は持ったままですよ。

だから息抜きの酒は大事ですか？

え？そんなに飲んでないよ！

いえ、私と会うときは常に飲んでますし、Facebookにもたくさんのお酒写真がアップしてすよね？

・・・好きは好きです。
でも手術前はしっかりと気にしてますから、

今後の展望を教えて下さい。

海外での医療活動を始めて２０年になりますけど、僕を求めてくれる国があれば、今後もどこにでも行きますよ。
ただ現状は、限界も感じてます。
いろんな方々にたくさんの支援を頂きながら、やらせて頂いていますけど、手術をするのはやはり僕１人なので、時間的に今の国数がギリギリかな～と。

でもまだまだ続けていきますよ。この歳になると、休んだらボケてしまいますから！