Voice #6
- 東京にも拠点を持つことは、道具・楽器はもちろん“気持ち”を置いておける
MD:まずは今話題の“フエルサ·ブルータ”についてですが、制作段階では何か苦労はありましたか?
山部:
いや、俺たちは別に無いかな。本場のアルゼンチンにも行かせてもらえたし。
アルゼンチンは羨ましかった~ 常設の小屋(劇場)が2つあって、1つはブエノスアイレスのど真ん中でお客さんを入れて公演中で、もう1つの小屋では、次の公演のリハーサルが本番同様にやっていて、日本では見たことのないスケールだったわ~
MD:よく東京に拠点を移す決意をしましたね?
山部:
別に岡山拠点を捨てた訳じゃなくて、2つ目の拠点として東京があってもいいかな、って思いですね。
やっぱり東京から発する文化って多くて、今回のフエルサ出演の機会も頂けたので、これを機に東京での“もの創り”も腰を据えてやってみようかな~って思いです。
やっぱり気持ちの持ちようで“もの創り”って変わってくると思うんですよね。これまで、東京で活動する場合は、ホテル住まいで、何か落ち着かない中での“もの創り”だったので。
東京に拠点、家を持つことで、道具·楽器はもちろん、“気持ち”も置いておける···これは大きいと感じてるんですよ。
MD:品川ステラボールでの長期間公演。何か楽しみにしていることはありますか?
山部:
イルカ! ホールの隣が水族館じゃないですか! 俺、年パス買いましたもん。
MD:噓でしょ?そんなイメージ全くないですよ。 逆に動物とかイジメてそうなイメージはありますけど。
山部:
ホントホント!イルカ好きなんですよね~ 普通に、癒されるというか···
MD:大人になりましたね~(しみじみ)
- しっかりと自分の足で土を捉える! 田植えから学ぶことも多いんです~
MD:最近、太鼓以外にハマっているものは?
山部:
米作りを始めました。“田植え”。岡山の方に田んぼを借りて、去年の収穫は上手くいきましたね~
MD:忙しい中、何で“田植え”を始めたんですか?
山部:
自分に子どもが出来たからかな~
太鼓って、すげぇ“土着”な楽器なのに、その“土”に触れる機会って本当に減ってしまったな~と感じていて、岡山の倉敷って、すげぇ田舎なのに、そんな田舎でさえも“土”に触れる機会なんてほとんど無くて。世界のために!とかはならんけど、自分の子どものためだけでも、親父(自分)が田んぼを持つことで、そこに子どもが遊びに来る、おたまじゃくしを救う、川で遊ぶ、苗触って怒られる···そういった環境を親父が作ってやらないと、子どもたちは“土”から何も学ばずに育ってしまうな~そう思って始めましたね。
MD:その“田植え”って、太鼓にも活かされているんじゃないですか?
山部:
そうなんですよね。最近、ジュニア世代や子どもたちを指導する際によく感じてることなんですけど、“太鼓はな!こうやって(足を踏ん張って)泥をな!地面をな!”って、熱く指導しても、その感覚を知らない子どもたちには響かないんだよね。泥にハマって、長靴が抜けたくないからグッと足で踏ん張ってからズボって抜く感じ!とかは分からないみたいで···大人たちの太鼓の型は真似できても、その本質、意味を体で表現することは出来なくなってるというか~でもこういった時代の流れをもしっかり捉えて、太鼓を続けていければ···
- “太鼓”が“音楽”からきっちり遅れてしまっている
MD:海外によく行ってらっしゃいますけど、海外での発見はありますか?
山部:
はっきり言えることは、“太鼓”が“音楽”からきっちり乗り遅れてるな、ってことですね。
“太鼓”って、中途半端に“音楽”になろうとしているけど、海外の音楽家からは明らかに遅れをとっていて。何ていうか···海外楽器の演奏者って、「それは出来ない。だって俺たちの言語に“音楽”はない。もし俺たちと演奏したいなら、お前たちから俺たちのリズム、音に寄ってこい」ときっぱり言うんですよね。誇りを持っているというか。 “太鼓”がそれを言わないのであれば、もっともっと今の音楽を勉強しないといけない。
そうしないと、“音楽”としては、きっちりと遅れてしまう。
ただ難しいんですよね~“和太鼓”って、楽器のパワー、音のパワーが強いので、通用しているように見えているだけで、本当の意味では通用してないと思うんですよね···生意気なことを言ってますが、本音です。
(熱すぎて、大半はカットします)
MD:その“遅れてる”っていう危機感、最初から気づいていたんですか?
山部:
舞台に立っている人間って、やっぱり気づかないですよね。
拍手が多ければ多いほど、気づかないですよね。子どもだから拍手をもらえていることも気づけていなかったし、自分が上手いと過信してたし。単なる太鼓打ちとしては上手くなったと感じてますが···
たぶん、10年前頃からですかね。三味線の浅野祥くんや、尺八の石垣征山くんと一緒にやりだして、音のバランスだったり、自分が“引く”ことで音楽作品をアップさせたりするように考え始め、音楽として太鼓を打ちたい!って強く思うようになったのは。だから、太鼓音楽としては、まだまだ精進が足らんと思って、それからは日々勉強です。太鼓打ちとして音楽家になれたら、本当の勝負ができる。俺はそう思っているんです。